どうせ祈るなら、愛しい……残酷な神ではなく、愛しい……ある意味優しい悪魔に

出来損ない







「さて、と……」

子供達を返して
戸締りを確認して
神父としての証である白い服の襟元を緩めたら

ここからは……神父としてではなく
「俺」、個人としての
「葉柱ルイ」としての時間が始まる

さあ、今宵も楽しもうか?

出来損ないの、悪魔さん?

全ての光が消えるころ
夜の蚊帳が降りるころ

出来損ないの悪魔は遣って来る

『コンッ』

合図は何時も同じ
同じ場所、同じ時間に
響くノック
騒ぎ出す、獣達

ああ……ヤツが来た

「………よぉ」
「…こんばんわ…」

微笑みかける彼
微笑み返す俺

こんな一瞬のことでも…駆け引きのスパイス
食うか、喰われるか
そうだろう?

「ちっ…相変わらず、ってところか?」
「…まあ、ね?」

舌打ちする表情
適わないと知った時の彼の癖

それを…本当は、愛おしいと思っている俺に
果たして、彼は気付いているのだろうか?

「まあ…いい、か」
「……何が?」

彼の視線が訴える

「分かっているくせに、と」

悪魔と人間のハーフの彼
神を信仰仕切れない神父の自分

お互い、半端物同士
その距離が、酷く心地良い

「そんなこと…どうだっていいってことだよ」

俺を、捕らえる視線に……
欲がはっきりと宿っているのが分かる

「俺が欲しいのは……」


『オマエだけ』


なあ、いっそのことさらってくれよ……
そうすれば、俺は……

自分に、神に

言い訳が、出来るのに

でも…彼は其れを許そうとはしないだろう
彼は……神に殉じながらも、彼を好いている自分に興味があるのだろうから

本当に、欲しているのは……俺だけ?

それが確かめたくて、こうして彼との駆け引きを繰り返す自分を……
彼は、どう見ているのだろうか?

滑稽?
哀れみ?
それとも……同属嫌悪?

彼が、俺に向き合うのは
これから、抱き合う合図

今は全て忘れたい
今だけは……この甘美な誘惑に
悪魔の腕の中で……酔って居たいから

今だけは、全て
忘れさせて、くれないか?

どうせ祈るなら
愛しい……残酷な神ではなく
愛しい……ある意味優しい悪魔に

そう、瞳を閉じながら、思った


06,01/22

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