僕は一人、人待ち月  

人待ち月ーsaid Princeー







今夜は、月がとても綺麗

そのまま、御伽話に出てきそうな位に


とてもきれい


でも、僕は一人人待ち月

綺麗なモノは、大切な人と共有しなきゃ

独り占めなんて……勿体ないでございましょう?


だから一人人待ち月

お供は冷めきってしまった二杯の紅茶

一杯は砂糖多めなミルクティー

一杯は砂糖無しのプレインティー

正反対の紅茶達

好む銘柄は同じでも

砂糖やお茶菓子の好みは全く逆で


口を付けられているのはプレインティーと

甘さ控え目に作られたジンジャーエールクッキーだけ

可愛いと言えば、きっと彼は怒るのでしょうけれど

僕にとっては誰よりも可愛いあの子の為に用意した紅茶と

甘い甘いバタークッキー達だけ、手付かずのままで

僕は、一体


「…一人で、何をして居るのでしょうか……」


今宵は一人で人待ち月

愛しいあの子は、何処で何をしているのでしょうね………?

今日は………


「…僕の、誕生日なのに………」





もう、あれから何年立つのでしょうか?



あの子のどうしようも無い淋しさから生まれた僕

彼の為だけに生まれた僕

最初こそ、彼を恨みもした

僕の存在理由

僕を生み出した彼の弱さと非力さ、身勝手さ

全て、全て全て恨んだ

けれど、結局僕は

一人で健気に耐え続けるあの子を……放って置く事など

孤独にさせることなど

出来なかったので……ございます


数年前の今日

僕は君を許した

君は僕を受け入れて……名を与えてくれた

だから今日は僕の誕生日なのでございます

だから……取って置きの茶葉で紅茶を入れたのに

二人だけの為に、用意したのに

神様のおかげで二人に成れてからの、初めての僕の誕生日なのに

ねえ……当然、君は祝ってくれますよね?


早く、早く帰って来なさい?

今夜は、月がとても綺麗だから

僕の誕生日だから

早く……帰ってきなさいね………?

NEXT…… YosihikoSaid


06,03/20

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