「ハッピーバースディ、ルイ」

誕生日プレゼントは、貴方で







日付が変る瞬間に鳴り出した携帯
奏でるのは……ロックとヒップホップが無茶苦茶に混ざったかの様なメロディ
無茶苦茶でいて、統率が取れているメロディは……
まるであの男の為に作られたのでは無いかと
馬鹿な想像をしてしまう

「ハッピーバースディ、ルイ」

開口一番にそれかよ……
俺……確かお前に誕生日教えてないんだけど?

相変わらず、目聡い、ヤツ

「……サンキュ」

まあ……嬉しかったのも事実だから……よしとすることにして
こんな夜中に掛けてきた理由は他にもあるんじゃねぇの?

「今日……そうだな、すぐ、だ。学校終わったら即効でウチの学校まえに来い
いいモンやるよ」

……何だか、酷く楽しそうなんですが、ご主人サマ?

「………分かった」

それだけ言うと、通話は切れた
………お前の行動は、未だに良く分からないけど………
独占欲が強いお前のことだから………
ひょっとしたら、誰よりも一番にそう言いたかっただけなのかもしれない

「………バーカ」

ワザワザ、其れだけの為に電話なんか掛けんじゃねーよ……

でも、そういいながらも……俺の頬は緩んでいて
素直には喜べない気もしてしまうから

捻くれ物の、俺


  †   †   †


その日は、酷く気分が良かった
口々に祝いの言葉を述べてくれるクラスメートや舎弟たち
プレゼントは無し
プレゼントの代わりに、精一杯の言葉を
それが俺たちの暗黙のルール

どんな物よりも……大切なヤツのオリジナルな一言が一番心を揺さぶるから
人間ってヤツは、不思議だ

それに、何よりも俺の気分を浮上させたのは
あの蛭魔の……可愛らしい行動と約束
如何して、約束という言葉はこうも人を舞い上がらせるのか

相手が、愛しい人なら………尚更

就業のチャイムと同時に、ホームルームなんざ無視して愛車を飛ばす
向こうに着くころには……きっと泥門も放課後になっているだろうから

付いた先、見えるのは
愛しい悪魔と……学校という場所に不釣合いなくらい派手な、部室という名目のカジノバー

「………来たか」
「………まあ、な?」

そりゃあ、出向きますよ?
愛しいお前の呼び出しデスカラ?

「で?何の用だよ?」
「ケケ、まあ、入れ」

促されて入った、静まり返った部室
今日、練習あるんじゃねえの?

「今日は休みだ。偶には…休みも必要だからな」
「……ふうん?」

じゃあ……わざわざ今日にした理由は?
偶には……素直になれねえの?

まあ……それがお前だから。
毎回折れるのは、俺

カジノテーブルの前に一つだけある椅子は、当然のごとく蛭魔が占拠しているから
カジノ台に寄りかかる

ぶつかる視線
交わされるものは?

「いいモンやるって言ったよな?」
「……おう」
「ほれ。有難く受け取れ」

乱暴に手渡された包み
緑の包装紙に金色のリボン
俺たちを象徴する色で包まれた、包みの中身

「……サンキュ」
「ケケケ。開けてみろよ?」

解いてしまうのが勿体無い気がするほどの、鮮やかな金を解いて出てきたものは……

「……セーター?」

緑と白を中心とした色合いのセーター
お前の中での、俺のイメージってこうなわけ?

「気に入らねぇか?」
「…いいや?ただ、意外だった…かな?」

身体の上から合わせてみるとサイズもピッタリ
まったく……
本当に何処で調べてくるのだろうか……?

本日、二度目の驚き

俺が呆けている所をみて満足したのだろう
さっさと彼は帰り支度を始める

「おら、帰っぞ」

機嫌は最高潮って所か?
いつもなら、此処で文句の一つでも出てくるところ

足取りも、何時もよりゆっくりなのは俺の気のせい?
誕生日だからって……気遣ってる?

やっぱ、意外と可愛いことすんのな、お前

何時も道理に過ぎる日々の中の、ちょっとした記念日
妙に優しい悪魔からの贈り物にこめられた意味を

この時の俺はまだ理解していなくて

バイクのアクセルを踏む
爆音が泥門の前に響き渡る

「なぁ………何で服にしたんだと思う?」
「あ!!?」

聞こえるか聞こえないかの瀬戸際で
アイツは、こう囁いた

『男が服を送るのは……脱がせるためなんだぜ?』

「………っ!!?////」

まったく……この男は

犯則だろ?

耳元で囁くから
意味深な台詞を残すから
その意味を知っている身体は……熱を持ち始めてしまう

でも……特別な日をコイツと抱き合って過すのも……

悪く、無いかもしれない










あとがきらしきもの


や、やっと書けました……!!
ギリギリ今月中には間に合ったあ!!
と、いうかですね……このお話、蛭魔さんに最後の台詞を言わせたいが為に書いたといっても過言ではないのです……;;
な、何はともあれハッピーバースディ葉柱ルイさんv
06,01/30

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