まるで崩壊していく俺の精神そのものだ

日常







音の無い世界は

まるで崩壊していく俺の精神そのものだ

極端に物の少ない部屋だけが今の俺の世界

いや、少し違うか
必要最低限の物と娯楽しかないから
一人で過すには、広すぎるこの部屋
娯楽は容易されている
パソコンにテレビにアメフト雑誌
どれも、意味のない、モノ

だって、俺の両手動かねぇもん

手錠で拘束された両腕
包帯でぐるぐる巻きにされた指

俺の為に取られた、苦肉の策
こんなもの……いらないのに

そう
ただ
血が見たい、だけ

ガチャ………

玄関のドアが開く音
ああ、愛しい人が帰って来た

「……ただいま、ルイ。いい子に、シテタか?」

うん、俺いい子にしてたよ?
つーか、何も出来ないだろ?この腕じゃ
お前がそうさせたんだろ?お前なしじゃ生きられないように

「腹減っただろ?飯買ってきたから、一寸待ってろ」

台所に消える蛭魔
冷蔵庫から二人分のミネラルウォーターを取り出して戻って来る
広げられるのは、質より量の栄養バランスの悪い食事

俺たちは自炊をしない
正確には、出来ない

だって、この家、一本も刃物ねーもん
当然、包丁も

外される手錠
解かれる包帯のこすれた音

響く
無音の部屋

「………なあ、何時までこんな生活、続けるつもりだ?」
「……お前の自傷癖が直るまで」
「ふーん………なら」

きっと、一生このままだぜ?

何時から始まったのかは覚えていない
気が付けば癖になっていた自傷癖

何時しか

高ぶる感情と

じわりじわりと

滲む血はセットに

家族ですら目を瞑っていたこの癖
なのにお前は……

「なら……何だよ?」
「………別に?」

解けた白が、弧を描きながら床に散っていくと同時に
お前は、俺の腕に口付ける
傷口をなぞりながら
慈しむ様に
安堵した様に

この癖を知ったお前は、俺を此処に閉じ込めた

お前名義のマンション
白い牢獄
大人しく拘束され続ける俺


嗚呼
狂ってる


「………お前は、俺のモノだ」

知ってる
だから、こうして拘束してるんだろう?

嗚呼、全てが狂ってる

俺は、血の一滴までお前のものだと言いたいんだろう?

だから……こうして閉じ込める

俺が、常にお前の監視下にいるように
ゆがんだ愛に、包まれているように

それが……心地よいと感じる俺も俺

崩壊していく日常

さようなら、日常と呼ばれていたモノ
そして……いらっしゃい?非日常的な倫理

ようこそ?
壊れた俺たちの日常へ
傍観者など誰もいない……

現実の、舞台へ


06,02/12

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