禁断の、果実

林檎







甘いものや果物の類が苦手な彼にしては珍しく
林檎が一つ、彼の部屋に転がっていた

「……どうしたんだよ、これ」
「貰った。お前が食え」
「……そんなに甘いの駄目なのか?」
「おう」

即答する彼に、一つ苦笑して

「……じゃあ、貰うぞ?」

その紅い球体に、噛り付く

『カシュッ』

真っ赤な真赤な
その実は
禁断の、果実

「……なあ、ヒル魔。こんな話知ってるか?」
「ああ?」

「アダムとイブが追放された切欠が……これだって言う説」

「………『知恵の実』………だろ?」

彼の視線を感じながらも、其れさえ理解した上で
もう一度、齧る

禁断の知恵の実
其れさえなければ、人間は感情を抱かなかったと聖書は言う
でも、其れは厭くまで男女間の話

ゆっくりと、お前が立ち上がる
近づいて、抱きしめて……

そして、キスを

「……甘いのキライじゃなかったっけ?」
「うっせぇよ。承知の上で……誘ったんだろ?」

また、唇が近づいてくるから
俺は目を瞑る
口付けが深くなるのは、きっと時間の問題

『コトンッ』

ころころと転がるのは、禁断の果実か
それとも……俺達の劣叙か

どちらにしろ……この関係が切れてしまうとは思えない
だって……目の前にいるのは、神をも恐れぬ悪魔なのだから


06,01/15

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