紫煙と、貴方  

紫煙







くゆる


くゆる


くゆる







煙草の、煙



貴方から漂うのは

甘い香りと紫煙のほろ苦さ

甘いモノ、大好きなくせに

何故か、貴方が好むのは苦い苦い煙草の煙


「……センセー、禁煙したことあるんですか?」
「………あ………?」

書類の山と挌闘中な貴方は少し不機嫌そうで
漂う煙も、いつもより少し濃くて

それでも、俺の相手をしてくれている先生は
ぶっきらぼうで…優しい人なんだと思う


「………そうだな……。お前が、嫌だってんなら」

考えてやってもイイぜ?

そう言って俺の髪を撫ぜる貴方の視線は、いつもより心なしか柔らかく

俺に、この人を愛しいと思わせるには十分過ぎるモノで


「………ズルイよ、センセー……」


くゆる


くゆる


くゆる


紫煙のほろ苦さの向こうには

ほろ苦さと甘さを持ち合わせた

極上のチョコレートの様な貴方

一口囓れば誰だってその魅力に気付く

貴方はそんな人だから
いつも、二人きりで居る時は紫煙を目で追いながら思うんだ


貴方を……このまま


独占してしまいたいと
口の中に入れれば、トロトロに溶けて無くなるチョコレートの様に
このまま……一つに溶けてしまえば

この感情は……満されるの………?

行き場も解答も無い難問は、紫煙と共に

ふわりふわりと

空中に、溶けて


消えた



06,03/20

ブラウザバックでお願いします。