その人  

01.思いのほかやわらかい唇



キスをした
柔らかそうな唇に
初めて知った感触
薄い唇は
思ってた通り
いや、思った異常に
柔らかかったから
ああ、多分俺は

もう二度と、お前を離してやれねえよ

そう悟った
初めての口付け


02.知らなかった広い背中


キスをした
そのとき、初めて知った
広い、お前の背中
お前の背中、見慣れてると、思ってたのにな……
あんなにくっついたの、初めてだったから
なんか、改めて
男なんだな、って思って
なんだか、少し、照れた
頬が紅のは…きっと
キスのせい、だけじゃない


03.意外なほど高い体温


「ヒル…魔?」

んだよ、その顔…
俺がお前に凭れ掛かるのがそんなに意外か?
俺だって、弱るときくらい、ある

「ルイ…いつもの」

そう言えば、お前はきっと俺に触れてくれる
『しょーがねえな』なんていいながら、穏やかな笑顔で
お前の見た目を裏切るほど高い体温
言ってやるつもるはねぇけど…落ち着くんだよ
まあ…もう、ばれちまってるかもな
そんなわけだから
黙って、側に、いろ


04.案外やわな精神


「ヒル…魔?」

肩に感じる心地良い重み
凭れ掛かってくるお前
少し低めのお前の体温
心地よい、時間
滅多に弱音を吐かないお前の
案外やわなくせに虚勢を張るお前の
無言の、甘え

「ルイ…いつもの」

そんなこと言われるまでもなく
俺の手は、お前を抱き寄せるように、お前の頭を撫でていて
きっと俺、だらしない顔してる
それでいて…穏やかで幸せそうな顔、してる
俺のお前より高い体温に、猫のように目を細めて
なあ、バレバレだぜ?
お前は…俺に相当気を許してるって
なあ…お前が甘えるのは、俺だけ、だよな?
だったら
ずっと、俺の側で
猫の様に、甘えていて頂戴?


05.気がついていなかった冷たい指先


「なあ、手、繋がねえ?」

思い切って言ってみた一言に、お前は怪訝な顔
まあ、な。この年の男が二人手ー繋ぐってのも怪しいよな……
でも、見てらんねーから
寒い筈なのに、変にやせ我慢
お前にとっては当り前かもしんねーけど
多分、お前が気付いていないだけ
だから、なあ

「いいから、手、繋ご?」

しぶしぶ差し出された手のひらは
思ったとうり、指先まで冷たかった
そんな、冬のある日


06.やっぱり大きい手のひら


07.どうせ長い足


08.思った通り短い神経


09.知りすぎた深い瞳


10.見たくない綺麗な顔






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