ステンレス様より頂きましたv  

とける







アスファルトから昇る熱。
バイク自体の熱。
太陽の熱。

ここ数日とんでもない気温を更新し続けている。
夏なのだから暑いのは当然。
だが、フルフェイスの中は人間の活動範囲じゃねーだろ!?
眩暈のしそうな温度に耐える。
シールド部分を少し開けていても暑い。
噴出す汗を拭うこともできず、鉄の塊の上。
嫌なら奴隷を呼ばなきゃいい話だが。
それとこれとは…まあ別問題。

バイクがカーブする。
いつものコース。
かける体重、向ける方向、つかまる強さ。
体に馴染んだ動作は条件反射。
横座りだから、前に体重をかけるのにちょっとコツがいる。
少し強めに白い学ランにつかまる。
厚い生地の手触り。
いったいなにが楽しくて、こんな暑い日に長袖なんだよ。
俺は今更なことに気がついて、葉柱を観察してみた。

黒髪がかかる白い首筋。
汗ひとつかかずに、相変わらず涼しげ。
少し覗き込むようにしてみても、白い頬は変わらず。
この日差しのなか、いくらノーヘルとはいえちょっとこれは。
怖いくらいいつも通り。
つかまる白い学ランは、熱をためて熱いのに。
着込んでいる当人はどこ吹く風。

葉柱の家に着いて降りたとき、正面から見てみたが、額はやはり乾いたままで。
むしろいつもより白く見えるくらいだ。
対して俺は。
急いでメットを脱いで喘いでいる。
半そでのワイシャツも張り付いて気持ち悪い。
噴出す汗は拭っても止まらない。
立てた自慢の金髪も無様にヘタって。

これはとっととシャワー、と急いで部屋に上がりこむ。
カバンを放り出し、バスルームへと踵を返したら。
後ろから抱きしめてくる長い腕。
首筋に顔を埋められ、わずかに香る葉柱の香水のニオイ。
気づかされる、自分の体。

(嫌だ。俺、汗かいてる…。)

軽く拭いはしたが、いまだ額はじっとりと濡れ。
のどだって、伝う雫が止まらない。

「や、やめろっ!!」

もがいても、絡みつく腕は強く。
嗅ぎ慣れたニオイに、抵抗する力は弱く。

「何で?」

くぐもった葉柱の声。
耳元の、予想外にアツイ吐息に、抗えない。

いつも通り、少し体温の低い腕に視線を落として。
自分の熱がさらに上昇するのを感じる。
暑い熱いアツイ。
脳細胞は大丈夫だろうか。
このまま馬鹿になってしまいそう。
かけられる体重が増す。
このまま体を繋いでしまおうか?
冷たい大理石の廊下。
ひんやりと気持ちよさそうで。
向き合おうと、体を回そうとしたそのとき。
ぐらりと葉柱の体が傾いだ。
えっ、と思う間もなく崩れる体。
支えるのも間に合わず、葉柱は床と抱き合う。

「おいっ、どうしたっ!?」

仰向けにしてとりあえず声をかけてみる。
幸い意識はあるようで、ぼそぼそと返事が返る。

「…悪い…熱射病。」

ため息が零れた。

「つまり、何か。お前やけに涼しそうだと思ったら、循環機能低いだけか?」

青白い顔に納得。
どうせだからと、冷たい床に寝かせたまま、冷蔵庫へ向かう。
明らかにファミリー用、いや、むしろ業務用に近いサイズの冷蔵庫から、スポーツドリンクを取り出す。
冷凍庫から保冷剤も確保して、廊下へ。

相変わらず汗もかかずに、いや正確にいうならかけずに横たわる葉柱。
冷たくて気持ちいいのか、うつ伏せたその姿はまんま爬虫類。
アルビノか、マニアには高く売れそう。
毒づきながら飲み物と保冷剤を渡してやり、俺はバスルームへと足を向ける。

「なに、看病してくれないの?」

半眼の瞳が期待している。
長い腕が俺のズボンを引く。
力のこもらない白い指に、抵抗できない。

「汗…かいてるんだけど?」
「知ってる。だから嫌がったんだろ。気にしすぎ。」

上体を引き上げ、足に絡み付いてくる。

低い体温、熱い吐息、零れる我儘。
看病しろと、ここにいろと。
俺を捕まえて離さない腕。
捕まえられて、離れない俺。
上がる熱、奪われる熱、冷たい廊下で冷やされることなく。
伏せた視線、囚われる視線、熱い日差しでとける距離。



「白魔館」のステンレス様から頂いてしまいました……vv
素敵です……v蛭魔さんに甘える葉柱さん可愛い…vvしかもウチの駄文と対だなんて…そんな恐れ多い……;;
段落変更可とのことでしたので、少々変更させて頂きましたが…そのままでも十分素敵ですvむしろ和真が世界観を壊していないか不安です…
ステンレス様、素敵な作品をありがとうございましたv



05,12/19

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